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2009年7月

2009年7月31日 (金)

唸る山

※この文章には、青少年の閲覧に適しない性表現、残虐表現、暴力表現が含まれております。
 18歳未満の方の閲覧は、ご遠慮ください。
 また、成人の方に対しましても以下の理由により、閲覧にあたってご注意ください。

 1)意図を誤解される恐れのある過激な犯罪の描写
 2)閲覧者に不快感を与える可能性のある描写

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唸る山

 山は唸っていた。
 風が木を揺らし、それがいくつも重なった山の唸りだ。
 この遊歩道をまっすぐ行けば、奥まで行ける。途中で砂利道が終わり、土になる。草に覆われてきて道がわかりにくくなる。やがて道はT字になる。左へ曲がれば頂上へ向かい、右へ曲がれば町へ出る。最後に自動販売機を見たのは約500メートル前くらいだ。時間にして15分くらい前。ここまでくる人間は、ほとんどいない。
「ねえ、この先になにがあるの?」
 隣で彼女が言う。別に何もないが、不安にさせてはいけない。
「いい景色が見られるんだ」
 見たことのない花が咲いている。晴れているのに、土が濡れている。山の匂いはいつも湿っている。
 道が狭くなる。並んで歩いていたが、僕は彼女を先に歩かせる。
「姿が見えてないと怖いからさ」
 後姿見られてんの、やだな、と言いながらも、素直に僕の前を歩く。
 彼女の背中を見つめる。形がいい。全体的に小ぶりだが、無駄な肉がついていない。スタイルは良い方だろう。
 風が吹く。山が唸る。そのたびに彼女が振り向く。
 いつでも追い風だ。僕らの背中をどんどん押す。
「これどっち?」
「左」
 怖い?と聞くと、少しと答える。それを何度も繰り返している。
 視界が少し開けた。木々の間から向こう側の山が見える。
「あ、きれい」
 僕は辺りを見回して、誰もいないことを確認した。
 彼女を背中から抱きしめる。抵抗はない。体を密着させて、うなじに鼻をつける。彼女は首をかしげて僕を受け入れる。左手で彼女の首筋を、右手で左胸を撫でる。
「ほんとに誰も来ない?」
 彼女は目を閉じたまま小さな声で聞く。
「来ないよ」
 きのうもここまで来たけど誰もいなかった、とは言わなかった。
 手入れのされていないこの山は、遠足場所にも選ばれない。遺跡の類もないから、研究者も来ない。鬱蒼としているから、子供は立ち入らせない。夏の肝試し、あるいは金のない奴らの性交場だ。しかし、今ではそれすら危ういかもしれない。
 彼女の太腿に手をやる。ジーンズの上からでもその柔らかさを感じる。そのままベルトをはずす。そしてTシャツを脱がせた。
「ちょっと、ほんとに平気なの? ここ」
 僕はなにも言わず、彼女を振り向かせてキスをする。
 長い時間、舌を絡める。くちびるを吸う。
「ねえ、息が出来ない」
 まだまだ、これからだ。
 キスをしながら、僕は視線の先にある1本の木を見る。枝に白いロープが掛けてある。先は丸めて結んである。重力に逆らわずに力が加われば、その丸は小さくなるように結んである。ここから20メートル先くらいか。
 彼女が両手で僕の頬を持ち、キスを遮る。
「やっぱり、だめ」
 彼を裏切れない。後に続くであろうこの言葉を、僕は頭の中で何度も繰り返す。
 やっぱりだめかれをうらぎれない・・・
 僕は彼女の髪に手をやる。今日だけ、今日だけでいいんだと、心の中で言う。彼女には届かない。
「ね、帰ろう」
 と彼女が言う。
 しかし、もう一度抱きしめたら、「もう、」と言いながらも抵抗はしなかった。
 山が唸っている。風が僕達をよろめかせる。
 その時初めて、彼女が強く僕を抱く。抱きつく。
 ブラジャーを剥ぎ取ると、そのままふたりは倒れ込んだ。
 もうすぐだ。もうすぐ終わりだ。出るんだ。僕達はもうすぐ、ここから出るんだ。違う世界が両手を広げて、僕達が出るのを待ってる。
 僕の動きに彼女は合わせる。深い、とても深いところで、僕達はひとつになる。
 風が唸っている。
 白いロープを目指して、少しづつ近づく。
 今僕を締め付けている彼女の存在が、だんだん薄く感じるようになる。軽い。もう少しすれば、簡単に持ち上げられるだろう。
 いつか僕も行く。でも今は、君が行くんだ。先に、君を行かせるんだ。
 彼女が甘美な声を出す。
 僕のところに戻ってきたいなら、このまま繋がっていてもいい。でも、もう遅いのかもしれない。君は言葉を発しないのだから。
 僕の手はもうすぐ、白いロープに届く。

JUL.31.2009

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2009年7月22日 (水)

遠くへ

遠くへ

 帰りの学活はかったるい。
 今日の反省だの来週の予定だのそんなのどうでもいい。みんなプリントもらってるんだろ?世間一般が思うほど中学2年生はヒマじゃない。こんな天気のいい日は早く帰りたい。
 おまけに担任はうざったい。寝てねえか?聞いてっか?を連発しながら歩くただの猿だ。
 机にほっぺたをくっつけてみる。冷たくて気持ちいい。ついでに反対も。窓から青い空が見える。鳥が飛んでる。気持ちいいんだろうな、なんて考えてみる。鳥のように大空を飛んでみたいってネットに書いたら、鳥はものすごい力を使って何百何千と翼を動かしてがんばって飛んでるんだって誰かが書いてきた。
<キミはがんばって歩けてるのか?>と。
 よその畑は青くみえるんだって母さんが言ってたのを思い出す。
 みんな考えすぎじゃない?オレは「飛んでみたい」だけだ。ただ飛ぶだけしか能のない鳥になんてなりたくない。
「ところで、急な話でみんな驚くだろうが、今井が転校することになった」
 担任の言葉にオレは飛び起きた。
 今井佳奈は近所に住む幼馴染だ。近所なのに今初めて知った。
「お父さんの仕事の関係で熊本に行くことになった。だから今日が最後だ」
 え~、という声が教室中に鳴り響く。なんで教えてくれなかったの~、とか、ひどい~、とか。
 だからさっき担任が言ったろ?急な話なんだよ。それにひどいと思ってるのはおまえらだけで、当の本人は友達と思ってないかも しれないんで。
 担任に促されて今井佳奈が前に出る。一般的な当たり障りのないありきたりな別れの言葉を告げ静かに頭を下げたら、なぜかみんな拍手した。意味不明な行動だ。
 じゃあね、元気でね、とそれぞれ言葉を交わしながらみんな教室を後にしたが、今井佳奈は書類やなんかが担任から渡されるとかで教室に残された。
 オレは廊下の壁に寄りかかってポカリスエットを飲む。
 視線の先にある小さな窓から中を見ると、今井佳奈は窓から外を見てた。全開の窓から夏の風が入ってきて、彼女のスカートをはためかせる。あいつ、背が伸びたな、と思った。
 よくいじめた。でもなんでも一緒にやった。あいつはよく泣いた。でもよく笑った。中学に入った頃から笑わなくなった。オレとも話さなくなった。
 髪がきれいだ。色白だけど、不健康には見えない。
 彼女のお父さんは実業家なのだと聞いたことがある。家は大きくて敷地も広い。うちなら3軒くらい余裕で建つだろう。そんな話をするたびに 母さんは、「お父さんももうちょっとこう、なんていうか、稼いでほしいよね」と愚痴った。「まあ、お金って、あったらあっ たでそれはまた大変なんだろうけど」とも。
  飲み終わったポカリスエットをゴミ箱に投げたら、その音で今井佳奈が振り向いた。
「なあ、おまえケータイ持ってる?」
 ポケットに両手を入れたままドアのところにもたれ掛かってオレは言った。
「持ってない」
「パソコンは?」
「持ってない」
 メアドなしか、と落胆する。
 彼女はオレを見ていて、オレも彼女を見ているけど、その視線と無言に堪えられなくて黒板を標的に変えた。
 なんか風に乗っていい香りがする。
「もうこっちにはこないの?」
「わかんない」
 オレの質問に彼女はことごとく即答する。それだけで、妙な威圧感を受ける。そう言えば今井佳奈と話したのは1年ぶりだ。
「あのさ、」
 と、せっかく彼女がなにか言いかけた時、うざったい担任が勢いよく教室へ入ってきた。
 なんだ、オマエまだ残ってたのか、早く帰れ、あ、 今井わりい、職員室一緒に行こう、あっちに全部揃ってるらしいから、書類、と鼻息荒く担任は今井佳奈の手を引いて早足で教室を後にする。オレは廊下に出てふたりが歩いて行くのを眺めた。彼女が振り向くかと思ったが、結局最後まで振り向かずに階段へ消えた。
 ドアを蹴飛ばして教室に戻る。
 もう誰もいない。
 彼女が使っていた机に手を置いてみる。さっき彼女が手をついていた窓から外を見てみる。同じ景色と同じ風。
 外に向って何回も唾を吐く。遠くへ。もっと遠くへと。
 振り向くと机はバラバラ。掃除したのにゴミは散乱。いいや、窓開けたままで。
 黒板に近づいて白いチョークを手に取る。猿の担任がよくやるように、カンッ!と1回チョークを黒板に当ててみる。
 そのまま”今井佳奈”と書こうと思って、やっぱりやめた。

JUL.22.2009

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2009年7月14日 (火)

ネクタイ

ネクタイ

 中沢、今日残業か?と聞かれた時、はい、もちろんです、と答えられなかった俺が悪い。
「暇だろ。ちょっとやるか」と、高木はグラスを持つふりをする。
 毎日残業が当たり前のこの会社で定時は珍しい。突然の定時だから、以前から約束があったとか今日予定があるとかの理由は通用しない。誘われれば断ることはできないのだ。別に酒を飲む事自体は一向に構わない。嫌いではない、むしろ好きだ。
「よし、じゃあとりあえずいつものところな」
 7時に。さて二次会どうするか。と誰にともなく言いながら、高木は歩き出した。
 高木は俺の上司で、いわゆる出来る男だ。上層部からの信頼は厚く、若手からも慕われている。とにかく怒らない。仕事のまとめ方、人間のまとめ方は天下逸品だと、誰かに聞いたことがある。
 この部署は全部で9人。男5人の女4人。それを高木一人でまとめているのだから、それは尊敬する。男のくせに世話好きで、よく見合い話を持ってくる。俺も紹介されたことがある。いい娘だぞ、趣味は編み物だって、今どきこんなおしとやかな女いないぞ、会え。としつこく言われたので会ったが、自分で編んだセーターを好んで自分で着るようなナルシストにしか思えず、その後会うことはなかった。
 高木は少しでも時間に余裕ができると、酒、酒、とうるさい。どこどこの焼酎がうまいだとか、あそこの蔵元直送だから間違いないとか、かなり詳しく知っている。だが味が分かるかというとそうでもない。何種類かの酒を混ぜてついでに水を少し足して出してみたら、新しい味だとうまそうに飲んでいたし、誰かが手に入れたボージョレ・ヌーヴォを一口飲んで、ん、これはまだ若いな、とつぶやいたこともある。
 酒癖が悪い。仕事のグチばかりを並べる輩もカンベンして欲しいが、高木はそれを裕に超えていて手に負えない。脱ぎだすのは当たり前。スナックのねえちゃんに足を揉ませる、肩を叩かせる。スナックならまだいいが、それをその辺の居酒屋でも言い出すからたまらない。店に怒鳴られ何度も追い出されたことがある。
 そんなだからかなり構えていたが、意外にも今日の高木は静かだった。
 飲み会の参加者は5人。
 いつもの居酒屋で2時間程飲んだあと、高木の提案でここへ来た。
「カラオケなんて、みんな最近やってないだろ」
 確かに最近やってないから、全員なんとなく気のりする。しかもカラオケなら個室だし、そんなに酒の量も増えないだろう。俺達にしてみれば、一番いい場所だった。
 とにかくみんなよく歌った。日頃のうっぷんを晴らすように、なんだかわからない曲をがなり声で叫んでいる奴もいた。上司と一緒にカラオケなんて嫌なもんだが、高木なら平気だった。そういう男なのだ。肩で風を切らず横暴でもない。

 ここに来てもう2時間が経つ。
 高木は酔っていた。曲と曲の間のなんとも言えない間の抜けた時間には目が据わっているように見えたし、呂律もうまくまわっていないように思えた。それでも、今日の高木はやはり静かだった。
「じゃあ、最後に私が歌います!ピンクレディのUFO~!!」
 一番若手の裕子がそう叫ぶと、高木は急に立ち上がり「なんだなんだ、裕子はそんな古い歌よく知ってるな~!」と嬉しそうに言った。そこで裕子が「このくらい知ってますよ~、部長のために歌います!」なんて余計なこと言うもんだから、高木も調子に乗って「よし、さすが裕子だ。今日俺、まだ脱いでないから脱ぐぞ~」と言いだした。
 ネクタイを取りワイシャツを脱ぐ。さらに白いタンクトップも脱いで上半身裸になった。女性陣はキャーキャー言っているが、下半身を露出しているわけではないので、叫んで場を盛り上げ、とりあえず恥じらいだけ見せておこうという感じだ。
 裕子はモニターを見ながらやけに真剣に歌っている。踊りまで披露して、かなり慣れていた。
 高木も踊りだした。上半身裸、頭にはネクタイを巻き付けて、まるでドリフターズのコントだ。
 高度経済成長時代は、こんな風景が普通だったのだろうか。今よりずっと元気があって、今よりもっと夢のあった時代には。高木はその頃新入社員としてこの会社に入ったメンバーだろう。
 裕子が奇妙な声で絶叫しながら歌い終えた。しながら、というのはおかしいが、スピーカーから音楽が消えても叫んでいたのだから、そう表現しても間違いではないだろう。
 みんなそれぞれ鞄を手にして部屋を出る。裕子がマイクを片付けて部屋を出ると、俺と高木の二人が残った。
「いいよ中沢、先行ってて。払っとくから、ここ」
「部長、酔ってますか」
「いやいや、このくらい」
 俺の言葉に、高木は手を小さく振る。
「でも、もうこのとおり。足フラフラだな」
 部屋を出るとすぐに、「このくらいのポーチ忘れたんで持って来てくれません?」と、廊下のずっと先から裕子が叫ぶ。「なに色?」と聞くと「黒!」とひとことだけ返ってきた。
 俺は振り返り、たった今出た部屋のドアの前に立ってガラス越しに中を見た。
 高木が服を着ようとしていた。
 タンクトップを着て、ワイシャツを着て、裾をスラックスの中にしまう。ベルトを締め直して鞄を手にすると、高木はソファーに座り、なにも映っていないモニターを見つめた。その表情は困憊のように、あるいは何かを甘受するかのように力がない。
 そして思いついたように、でもゆっくりと、頭に巻いたネクタイを取った。
 どこでも売っていそうな、安物のくたびれたネクタイだ。
 
 高木はそれを見つめている。
 俺はそのまま、ノブに手を掛けたまま、ドアを開けられないでいる。

JUL.14.2009

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2009年7月12日 (日)

しぜんの命

しぜんの命 ~JUL.12.2009~

1章 しぜんはきれいだ

 ある日、かづおという男の子がいた。その時かづおは野球をしていた。
 かづおは小学校3年生。
 お父さんがボールをなげ、かづおがボールをうつ。ボールは森へとんだ。
 かづおは森に向かい走った。森には木がいっぱいはえていた。
「しぜんはやっぱりきれいだな~」と、かづおは言った。
 地面に葉が落ちてくる。かづおはボールを拾うと、お父さんへつっ走った。
 かづおは言った。
「お父さん、森の命はきれいだね」
 お父さんは言った。
「森には『虫』っていうしぜんがあるんだよ」
「じゃあ、今から虫をみに行こうよ」と、かづおは言った。
「じゃあ、行こう」
 お父さんは賛成した。
 そして、虫をいっぱい見つけた。
 ・・・アリ、・・・セミ、・・・カマキリ、・・・。
 いろいろな虫がいた。

2章 しぜんは人たちの仲間

 かづおの学校は土曜日、日曜日と休みだ。
 今日は金曜日。でも職員会議があるので授業は1時間しかない。
 1時間目は理科だ。
「今日は畑に行きます」
 畑に行くと、葉は虫食いだらけだった。
「虫ってひどいね。食べ物食べたりして」
 かづおがそう言うと、先生は言った。
「みつばちがいないと人は死んじゃうんだよ」
 かづおは思った。
”しぜんは人たちの仲間なんだ!”

3章 しぜんの命

 かづおは動物園に行った。
 いろいろな動物がいる。キリン、ライオン、ゾウ・・・。
 かづおは言った。
「しぜんのほんとうの命だ!」
「ほんとだね」とお父さんは言った。
 その帰り、かづおは思った。
”楽しかったな・・・”
 そしてかづおは次の日、学校へ行くのだった。

Thank you for the comment.
I-san,はやっ!なわたし-san,若手男子T-san,角に頭をぶつけてケガ-san,
はこす-san

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