唸る山
※この文章には、青少年の閲覧に適しない性表現、残虐表現、暴力表現が含まれております。
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また、成人の方に対しましても以下の理由により、閲覧にあたってご注意ください。
1)意図を誤解される恐れのある過激な犯罪の描写
2)閲覧者に不快感を与える可能性のある描写
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唸る山
山は唸っていた。
風が木を揺らし、それがいくつも重なった山の唸りだ。
この遊歩道をまっすぐ行けば、奥まで行ける。途中で砂利道が終わり、土になる。草に覆われてきて道がわかりにくくなる。やがて道はT字になる。左へ曲がれば頂上へ向かい、右へ曲がれば町へ出る。最後に自動販売機を見たのは約500メートル前くらいだ。時間にして15分くらい前。ここまでくる人間は、ほとんどいない。
「ねえ、この先になにがあるの?」
隣で彼女が言う。別に何もないが、不安にさせてはいけない。
「いい景色が見られるんだ」
見たことのない花が咲いている。晴れているのに、土が濡れている。山の匂いはいつも湿っている。
道が狭くなる。並んで歩いていたが、僕は彼女を先に歩かせる。
「姿が見えてないと怖いからさ」
後姿見られてんの、やだな、と言いながらも、素直に僕の前を歩く。
彼女の背中を見つめる。形がいい。全体的に小ぶりだが、無駄な肉がついていない。スタイルは良い方だろう。
風が吹く。山が唸る。そのたびに彼女が振り向く。
いつでも追い風だ。僕らの背中をどんどん押す。
「これどっち?」
「左」
怖い?と聞くと、少しと答える。それを何度も繰り返している。
視界が少し開けた。木々の間から向こう側の山が見える。
「あ、きれい」
僕は辺りを見回して、誰もいないことを確認した。
彼女を背中から抱きしめる。抵抗はない。体を密着させて、うなじに鼻をつける。彼女は首をかしげて僕を受け入れる。左手で彼女の首筋を、右手で左胸を撫でる。
「ほんとに誰も来ない?」
彼女は目を閉じたまま小さな声で聞く。
「来ないよ」
きのうもここまで来たけど誰もいなかった、とは言わなかった。
手入れのされていないこの山は、遠足場所にも選ばれない。遺跡の類もないから、研究者も来ない。鬱蒼としているから、子供は立ち入らせない。夏の肝試し、あるいは金のない奴らの性交場だ。しかし、今ではそれすら危ういかもしれない。
彼女の太腿に手をやる。ジーンズの上からでもその柔らかさを感じる。そのままベルトをはずす。そしてTシャツを脱がせた。
「ちょっと、ほんとに平気なの? ここ」
僕はなにも言わず、彼女を振り向かせてキスをする。
長い時間、舌を絡める。くちびるを吸う。
「ねえ、息が出来ない」
まだまだ、これからだ。
キスをしながら、僕は視線の先にある1本の木を見る。枝に白いロープが掛けてある。先は丸めて結んである。重力に逆らわずに力が加われば、その丸は小さくなるように結んである。ここから20メートル先くらいか。
彼女が両手で僕の頬を持ち、キスを遮る。
「やっぱり、だめ」
彼を裏切れない。後に続くであろうこの言葉を、僕は頭の中で何度も繰り返す。
やっぱりだめかれをうらぎれない・・・
僕は彼女の髪に手をやる。今日だけ、今日だけでいいんだと、心の中で言う。彼女には届かない。
「ね、帰ろう」
と彼女が言う。
しかし、もう一度抱きしめたら、「もう、」と言いながらも抵抗はしなかった。
山が唸っている。風が僕達をよろめかせる。
その時初めて、彼女が強く僕を抱く。抱きつく。
ブラジャーを剥ぎ取ると、そのままふたりは倒れ込んだ。
もうすぐだ。もうすぐ終わりだ。出るんだ。僕達はもうすぐ、ここから出るんだ。違う世界が両手を広げて、僕達が出るのを待ってる。
僕の動きに彼女は合わせる。深い、とても深いところで、僕達はひとつになる。
風が唸っている。
白いロープを目指して、少しづつ近づく。
今僕を締め付けている彼女の存在が、だんだん薄く感じるようになる。軽い。もう少しすれば、簡単に持ち上げられるだろう。
いつか僕も行く。でも今は、君が行くんだ。先に、君を行かせるんだ。
彼女が甘美な声を出す。
僕のところに戻ってきたいなら、このまま繋がっていてもいい。でも、もう遅いのかもしれない。君は言葉を発しないのだから。
僕の手はもうすぐ、白いロープに届く。
JUL.31.2009
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