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2008年12月

2008年12月30日 (火)

毛糸のてぶくろ、ひとりぶん

毛糸のてぶくろ、ひとりぶん

とても寒い夕暮れ。
ふたりで歩く砂浜、毛糸のてぶくろひとりぶん。
片方づつ、きみは左手に、僕は右手に。
お互いてぶくろのないほうで手をつなぐ。
国道を走る車の音。潮のかおりときみのかおり。
つないだ手を、きみは僕のダッフルコートのポケットにいれた。
「あったかい」ときみが言うから、「あったかい」と僕も言った。
小さな波が打ち寄せて、僕たちは小さくよける。
いつまでもこうしていたいと僕は思う。
ただ、きみが退屈でさえなかったらと。

DEC.30.2008

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2008年12月22日 (月)

空へあがる

空へあがる

 砂嵐。

 14MHzのこのあたりはいつも空いている。静かだ。
ヤエスのHFオールモードトランシーバーは、まるで時間を吸い込むか、あるいはかき消すかのように、延々と砂嵐を流し続けている。
 管理会社に何度も頭を下げ、僕らの他に居住する24世帯全部の了解を得て、マンションの屋上に設置した3エレメントの八木アンテナ。それを廻すローテーターの表示は西北西。小さな赤いランプを灯す外部VFO、アンテナチューナー、その横にスタンドマイク。砂嵐を流し続けている外部スピーカー、そして力強さを感じさせる重厚な造りのマニピュレーター。もちろん、その全てが最新機種ではない。

 僕は抽斗から一枚のQSLカードを取り出した。
 背中合わせに座っているスヌーピーとチャーリーブラウンの横で、ライナスがタオルを抱いている。発行ナンバーは1番。裏のレポート欄には”すごい強い”と大きく書いてあり、正式な交信記録は全くない。そして備考欄に書かれた文字。

<これ、ほんとに届くかな?届きますように・・・>

 もちろん僕も彼女にQSLカードを送った。当然彼女のもとへ届いた。
「これ大切にする。あなたも大切にしてね、それ」
 それが、僕がいま手にしているカードだ。
 日付は平成元年12月24日。

 あいかわらずの砂嵐。
 誰もいない。
 DRIVE、LOAD、PLATEを調整する。SWRは1.1。出力は200W。

 さざなみが潮の香りを運んでくるように、小さな塊が僕のなかへゆっくりと入り込んでくる。ひとつ、ふたつ。それはしだいに量を増してきて、いつのまにか大きく渦を巻くように、心臓のあたりで停滞している。どうすればいい?手を突っ込んでも流れを治めることのない渦を、僕は僕の外側から呆然と眺めることしかできなくなっている。だれかに、この渦をとめてほしい。混沌と覆い尽くす絶望のなかを、僕はゆっくりと進んでいるようだ。
 ゆっこ。僕は君のことを忘れたことなんか一度もない。

―届くか。
 窓から見る景色は雲ひとつない一面の星空。電離層まで目に見えるような錯覚さえ起こす。けれど天候もコンディションも関係ない。あの時約束した年の、約束した日の、そしてもうすぐ約束した時間なのだ。PTTに添えた指に汗を感じる。
―届いてほしい。
 そしてなにより、この約束を覚えていてほしい。

「20年後、お互い40歳になったら会おう。私の誕生日に。あ、ねえ、空で会おうよ。ね、いい考えでしょ? あなたは、おめでとうって言う。私は、ありがとうって言うの。メリー・クリスマスって言ってもいいよ。クリスマス・イブだから」

 無線機に接続されたパソコンが、約束の時間と周波数をデジタル表示する。指に力を入れると同時に外部スピーカーは美しい砂嵐を遮断する。
 そして、僕の想いは空へあがる。

DEC.22.2008

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2008年12月20日 (土)

なかよしっぽ

なかよしっぽ

ぼくは しっぽ。
アビちゃんの しっぽ。
どこへ いくのも、ねこの アビちゃんと いっしょ。
ぼくたちは、だいの なかよし。

きょうは、くさはらを たんけん。
はっぱが さらさら さらさら と、ぼくに あたるよ。
きもちいいよ。

あっ! アビちゃん。
バッタみつけたよ!
つかまえようよ。

ねえ、アビちゃん!
そんなに ぼくを ふりまわさないで!
そんなに ぼくを らんぼうに ふりまわさないで!
こわいよ! いたいよ!

バッタ にげちゃったね。
ざんねん!

ね、ねえ ちょっと アビちゃん。
おおきい ねこが おいかけて くるよ!
アビちゃん、はやく、はやく!
はやく にげて!
でも アビちゃんだけ さきに いかないで!
ぼくを おいてかないで!

きょうは いいてんきだね。
アビちゃん なにみてるの?

おひさま ポカポカ きもちいい。
ぼくは ねてるね。

ごはんだ!
きょうはなにかな?

きょうは さむいね。
いっしょに ねようよ。
いっしょに まるまろうよ。

ねえ ねえ、アビちゃん。
まどの そとを みてごらん。
あのこ かわいい。かわいいよ!
いっしょに あそぼうって さそって みようよ。

アビちゃん、がんばれ!
あれ? あのこの しっぽが ぼくを みてる。
しっぽちゃんも かわいいな。
アビちゃん とっても はずかしそう。
ああ、なんだか ぼくも はずかしく なっちゃった。
アビちゃんの あしの うしろに かくれちゃお。

あのこ いっちゃった。
ああ、ざんねん。
アビちゃん とっても かなしそう。
なんだか とっても かわいそう。
アビちゃん そんなに おちこまないで。
ぼくも かなしく なっちゃうよ。
ぼくが ついているじゃないか。
げんきを だしなよ。
さあ!
きょうも いっしょに どこかへ あそびに いこうよ!

DEC.20.2008

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